生きているのも日常、死んでいくのも日常

昨年75歳で亡くなった女優の樹木希林さんの、出版社の宝島社が新聞に掲載した2つの企業広告がとってもすばらしかった。

宝島社は企業理念として社会に伝えたいメッセージを、センセーショナルな企業広告で世の中にメディアを通じて伝えてきて数々の広告賞をとっています。

「あとは、じぶんで考えてよ。」「サヨナラ、地球さん。」をメインコピーに、2枚の写真を使用して掲載されました。「サヨナラ、地球さん。」はアインシュタイン風のチャーミングな表情で地球と最後にお別れする樹木さんの表情が掲載されました。

樹木さんは「死ぬということは悪いことではない。当たり前のこと。『生きているのも日常、死んでいくのも日常』。私はちゃんと見せていきたい。そういう事を伝えるのも、死んでいく者のひとつの役目かなぁと思いやらせてもらうことにしました」と語っていた様ですが、樹木希林さんの最後のメッセージでいままで避けてきた「死」について考えることで、どう生きるかを考えるきっかけになればとっても素晴らしいことですよね。。

ちなみに、宝島社の本で「樹木希林 120の遺言 死ぬときぐらい好きにさせてよ」 が、発売から1カ月半で累計発行部数40万部を突破してベストセラーになり、女性を中心に世代を超えて共感を呼んでいるようです。私も買って読ませていただきました。

以下、コピー転載

■読売新聞コピー転載
サヨナラ、地球さん。(キャッチコピー)

靴下でもシャツでも、最後は掃除道具として、最後まで使い切る。人間も、十分生きて自分を使い切ったと思えることが、人間冥利に尽きるんじゃないかしら。そういう意味で、がんになって死ぬのがいちばん幸せなのよ。
用意ができる。片付けして、その準備ができるのは最高だと思うの。
ひょっとしたら、この人は来年はいないかもしれないと思ったら、その人との時間は大事でしょう?そうやって考えると、がんは面白いのよ。
いまの世の中って、ひとつ問題が起きると、みんなで徹底的にやっつけるじゃない。だから怖いの。自分が当事者になることなんて、だれも考えていないんでしょうね。
日本には「水に流す」という言葉があるけど、桜の花は「水に流す」といったことを表しているなと思うの。
何もなかったように散って、また春が来ると咲き誇る。桜が毎年咲き誇るうちに、「水に流す」という考えかたを、もう一度日本人は見直すべきなんじゃないかしら。
それでは、みなさん、わたしは水に流されていなくなります。今まで、好きにさせてくれてありがとう。樹木希林、おしまい。

■朝日新聞コピー転載
あとは、じぶんで考えてよ。(キャッチコピー)

絆というものを、あまり信用しないの。期待しすぎると、お互い苦しくなっちゃうから。
だいたい他人様から良く思われても、他人様はなんにもしてくれないし(笑)。
迷ったら、自分にとって楽なほうに、道を変えればいいんじゃないかしら。
演技をやるために役者を生きているんじゃなくて、人間をやるために生きているんです。
代表作?ないのよ。助演どころか、チョイ役チョイ役って渡り歩く、チョイ演女優なの。
自分は社会でなにができるか、と適性をさぐる謙虚さが、女性を綺麗にしていくと思います。
楽しむのではなくて、面白がることよ。中に入って面白がるの。面白がらなきゃやってけないもの、この世の中。
老人の跋扈(ばっこ)が、いちばん世の中を悪くすると思います。
病を悪、健康を善とするだけなら、こんなつまらない人生はないわよ。
死に向けて行う作業は、おわびですね。謝るのはお金がかからないから、ケチな私にピッタリなのよ。謝っちゃったら、すっきりするしね。
“言わなくていいこと”は、ないと思う。やっぱり言ったほうがいいのよ。
こちら希林館です。留守電とFAXだけです。なお過去の映像等の二次使用はどうぞ
使ってください。出演オファーはFAXでお願いします。
このように服を着た樹木希林は死ねばそれで終わりですが、またいろいろなきっかけや縁があれば、次は山田太郎という人間として現れるかもしれない。
えっ、わたしの話で救われる人がいる?それは依存症というものよ。

 

生活空間工房 クラフトワーク

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